生きることは食べること、日本の食と農業を守りたい その5

 農協からの7000万円の借金も返せず、木村社長と吉田専務は途方に暮れてしまいます。倒産の危機です。俺たちは、志は高かったけれど、人生間違ったかなと考え込んでしまいます。
 そんなとき、地元の幼稚園のPTAから「自分たちでソーセージを作りたいんだけど」という電話がありました。そこで、実際にソーセージづくりをやってみると、ものすごい反響を呼びました。キャーキャー言いながら自分の手でブタ肉に味をつけて、練って、羊の腸に詰めて、完成したら拍手喝采。そして、木村社長のところにやってきて「社長、今日は本当に来てよかった。ハムも買って帰りたい」とか「名前と住所を書いておくから、ギフトのパンフレットができたら送ってほしい」と言ってきたのです。要するに体験というニーズを掘り起こしたのです。光が見えてきました。
 ブタ肉とソーセージ、そして新鮮な野菜でバーベキューもするようになりました。野菜の直売所もできました。会員制度をつくり、顧客の組織化にも取り組みました。経営が軌道に乗り始めました。
 そんなとき、またまた危機におちいります。売り上げが伸びないときは協力してくれた農家の人たちが、売り上げが伸び始めると、いろいろなことを言い出したのです。最後には株主総会で、クーデターが起こりました。それを乗り越えたとき、モクモク事業の本当の目的が見えてきました。それをモクモクの7つのテーゼとしてまとめました。クーデターのおかげで目的がはっきりしたのです。
「モクモクの7つのテーゼ」
1 モクモクは、農業振興を通じて地域の活性化につながる事業をします。
2 モクモクは、地域の自然と農村文化を守り育てる担い手になります。
3 モクモクは、自然環境を守るために環境問題に積極的に取り組みます。
4 モクモクは、おいしさと安心の両立をテーマにしたモノづくりを行います。
5 モクモクは、「知る」「考える」ことを消費者とともに学び、感動を共感する事業を行います。
6 モクモクは、心の豊かさを大切にし、笑顔が絶えない活気ある職場環境をつくります。
7 モクモクは、協同的精神を最優先し、法令や民主的ルールに基づいた事業運営を行います。
 モクモクは、商品でなく、モクモクの考えを売っているのです。
 次回は最終回です。木村社長の考えている食育や今後の農家のあり方等について、書いてみたいと思います。
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